M.Nの人間ウォッチング
孤独の旅の参加者にみる
「人間関係の発展」
by M.N

今回の教材は、非まじめ旅行社が2003年10月4、5日におこなった「孤独の旅 北海道」である。ちなみにこの論文を書いているのは4日午後11時過ぎなので、ここで報告する内容はこの旅の前半であることに注意していただきたい。

そもそもこの研究は、「見ず知らずの孤独な52人が北海道・バスツアーに参加したら、どのような人間関係が形成されるのか」という疑問に答えるためにスタートした。そう、この旅の参加者はすべて一人で申し込みをしており、誰一人としてお互いを知らないのである。

研究材料に選ばれたのはこの写真に登場する52名である。ちなみにバスの運転手1名がこの数には含まれている点に注意してもらいたい。
 
この二人の女性はバスガイドさんではない。孤独な52人のうち、10名は地元北海道の人間であり、そのうち2名の女性(上の写真を参照)がボランティアでガイドをおこなった。これは他の同様の研究と大きく異なる点である。普通の観光旅行で、地元の人間が参加することはまずないのである。しかしこれが見ず知らずの52名の人間関係の発展に大きな役割を果たしたことが、この研究でわかった。

さて、当初52名はお互いにあまり話すでもなく、実にぎこちない関係がしばらく続いた。

右の写真を見ていただきたい。一見グループ旅行に見えるが、彼らの間ではほとんど会話が成り立っていなかったのだ。

しかしあることがきっかけでこの他人行儀な関係に変化が見え始めた。それは支笏湖での出来事である。

孤独な女性4名は、足漕ぎボートに乗り、湖へと出て行ったのだ。

普通こういう現象を見ると、われわれ研究者は「な、なんて寂しいのだ!よりによって女の子だけで・・・」という少しセンチメンタルな感想をもつ。学術研究者は常に冷静でなくてはいけないが、それほど悲しい現象なのだ。が、しかしである、これがきっかけで大きな変化が発生した。
 
湖へと出て行った孤独な女性4名を見送っていた他の孤独な人々の間に会話が始まったのだ!

 「あの女の子たち、どうして4人であんな乗り物にのっているの?」
 「そうだよね。だいたいどうして男の子を誘わないんだろう」
 「そうじゃないよ!男が女の子を誘えばいいんだ!」
 「うんうん。で、君の名前はなあに?」
 
そして次のチャレンジャーが登場した。今度は男と女がジェットボートに乗ったのだ!それも普通は一人1500円なのに、集団で交渉して1000円に値引きまでしている!とても興味深い現象である。

その後大倉山シャンテ(スキージャンプ場)ではすっかり仲良くなった見ず知らずの他人(全員孤独を自称)が、表彰台でポーズと取ったりと、雰囲気は完全な修学旅行である。

でも修学旅行の割には年齢がいっている。

でも女性の年齢のことはいってはいけない。

でも事実だからしかたがない。

「高校生」に見える、というようなお世辞をいうよりましだ。

でも精神的には修学旅行生のようなものだ。

これを専門用語では「成人の修学旅行錯覚症候群」と呼ぶ。(M.N、 第137回 日本心理学会総会記念講演「修学旅行シンドローム」、2001年10月を参照のこと)

そのあとは小樽へ行ってもバスの運転手さんを除き全員が、この旅を修学旅行と勘違いしているようであった。

ちなみにこの写真に写っている悪がきたちは、先生に見つからない場所でタバコを吸おうと、喫煙場所を探している様子である。

どこにも先生がいないのに、不思議な行動だ。

そして夜の宴会である。

修学旅行であることをすっかり忘れた彼らは、酒を飲んで騒ぎ出した。

山形からの参加者は立ち上がってこういう話をはじめた。

「僕は今日、はじめて飛行機に乗りました。仙台からここ北海道へ飛行機で来たのです。飛行機に乗るのが心配で、1週間前に仙台空港へ下見に行きました。山形から250キロもありました。」

彼らは孤独なだけではなく、変なやつらなのである。
ということで、今回の研究では以下のことがわかった。
バスの運転手さんだけは友達になれなかった